研究概要 |
・固液混合相内の流動状態の把握 アスペクト比(Γ)0.5〜1.0においては,上下境界端近傍に存在する境界層(Ekman境界層)の影響を受けて,多様な渦モードが発生した.特にΓ=0.6では二個の渦対がお互いに自励振動をする領域があること,自励振動域を過ぎて更に回転数(Reynolds数)が増加すると,二個の渦は互いに振動することを止め,半径方向に安定した渦対(Twin渦)を形成し,一旦安定するが,すぐに全く異なる振動モードが現れること,などが分かった.Γ=3の濾過実験ではナイロン粒子(平均粒子径約77μm,比重1.2)を使用した.これより,内円筒の回転速度(Reynolds数)が増加するにしたがって槽内の濃度が,あまり低下することなく(圧損を高めることなく),濾過が進むことが分かった.回転速度が0の場合(Re=0),約7分で,槽内の粒子はほとんどが濾過フィルターに付着してしまい,テストセクションの濃度が透明に近くなることから,回転による効果は大きい. ・微生物の培養と流れの計測 血球細胞を直接扱うことは安全上困難なため,血球細胞と類似した植物系光合成微生物(クロレラ)を使用し,Taylor渦による培養への流体力学的な効果を調べた.Γ=1とし,回転数は150rpmと250rpmの二種類,内円筒と外円管の半径差は25mmとした.両者とも照射光量や培養条件は同じで,培養時間は10日間である.これより150rpmではすでに3日目から微生物の沈殿凝集が顕著に現れるのに対して250rpmでは沈殿凝集物はほとんど発生しなかった.両者とも細胞の破壊は殆ど無く,活性度の高い状態を維持して増殖したが,増殖率は低速において,沈殿凝集した方が高い値を示した.これらの結果を総合すると,微生物は光と流れの存在によって急激に増殖するが,基本的にせん断流れの少ない場所を選択する,この意味で今後固定化技術はかなり重要になると考えられた.
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