本研究は、強安定成層流中で温度勾配をエネルギー源として発達する内部重力波の発達・崩壊過程における乱流生成や逆勾配熱拡散の発生機構を解明することを目的としている。温度成層風洞中に強安定混合層を形成し、その中で内部重力波を発達させた。本研究室で開発した冷熱二線式温度流速計とI型冷線7組とX型熱線1組から構成される多チャンネルプローブを用いて、内部重力波の発達・崩壊過程を測定した。得られた温度・速度変動に対して周波数および位相差解析等を行い、遷移過程における内部重力波の空間構造の変化の過程を明らかにし、以下の結論を得た。 (1)強安定成層流中に内部重力波が発達するに伴い、内部重力波の上限周波数であるBrunt-Vaisala周波数(N_B)以下の周波数領域で、鉛直方向速度変動wと温度変動θのエネルギーが顕著に増加する。このとき、w-θ間のコヒーレンスが上昇し、同時に位相差は-πから-π/2へと変化する。 (2)内部重力波が発達するとともに、多チャンネルプローブで計測された各温度変動間のコヒーレンスはN_B周波数以下で1に近づき、位相差は零に漸近する。これは、内部重力波が鉛直方向に強い相関を有する構造として発達することを示している。 (3)内部重力波の発達過程では温度・速度変動間の相互干渉を通じて高いポテンシャルエネルギーを持つ高調波の波動へと変化し、崩壊過程では、ポテンシャルエネルギーの集中するスパイク状の波形と、より乱雑化の進行した高周波の波形が間欠的に出現する。 (4)内部重力波の波頭における局所的な砕波により、スパイク状波形に蓄積されたポテンシャルエネルギーが非線形干渉を通じて高周波成分へと輸送され、乱雑化する過程で逆勾配熱拡散が発生する。 (5)流れ方向2点空間計測から求めた内部重力波の位相速度の測定結果は、内部重力波の発達過程で位相速度が増加することを示した。
|