本研究は、衝突項にBGK近似を用いたボルツマン方程式に高次精度グリッドレス法を適用した3次元マイクロスケール流動現象グリッドレス解法の研究開発を目的と、平成15年度は、それに必要な基本的構成要素として以下の1〜3の項目について重点を置いた研究を実施した。 1.低速で流れる内部流に対するボルツマン方程式の流入・流出境界条件の確立 最も基本的なマイクロスケール流れであるマイクロチャネルを取り上げ、マッハ数が0.0001〜0.1という低速流れに対して、安定して信頼性の高い数値シミュレーションが可能となる流入・流出境界条件を確立した。 2.相対的に小さな密度や圧力の変動を分子分布関数から正確に算出する手法の確立 分子速度空間での数値積分法を工夫することにより、低速の流れに対して少ない分子速度空間格子点数でも小さな密度や圧力の変動を信頼性良く捕らえることが可能になり、これまで困難と考えられてきた3次元流れへの拡張も不可能では無くなった。 3.2次元マイクロスケール流動現象に対する高次精度グリッドレス解法コードの作成 BGK近似を用いたボルツマン方程式に、上記1の境界条件と2の数値積分法、および、3次精度グリッドレス法を組み込んだ2次元マイクロスケール流動現象シミュレーションコードを作成した。本手法は、音速程度の流れに対しては、従来のモンテカルロ直接シミュレーション法と信頼性や経済性において同程度であるが、マイクロスケール流れのような低速流れでは、圧倒的に優秀であることを確認した。 以上の成果より、3次元マイクロスケール流動現象グリッドレス解法確立のための基本的構成要素が整った。
|