研究概要 |
アークプラズマ風洞を使い,窒素を作動ガスとする弱電離高温気流を安定して生成できるようになった.投入電力は9kW(150V×60A)で,等エントロピーを仮定した計算による流れのマッハ数が5と6になる2種類のノズルを製作した.この風洞を使ってプラズマ高温気流特性および材料開発に適用した結果について述べる. マッハ数が5および5の高温窒素気流中に球頭円柱物体を設置し,その前方における流れの発光分光計測を行った.その結果,球頭円柱物体の存在によって窒素分子の励起が著しく促進され,一価さらに二価の窒素イオン分子の存在が確認された.また,代表的な数種類の発光スペクトルについてその強度の空間分布を調べたところ,澱み点で発光強度が急激に増加していることが分かった.さらに,観測したスペクトルから測定領域における窒素分子の振動温度をボルツマンプロット法により求めた.その結果,マッハ数5の場合は物体を設置した時の振動温度はほぼ5,000Kの一定値となった.物体の無い流れだけ場合も5,000Kとなり,物体の有無による明確な違いは見られなかった.一方,マッハ数が6の場合は物体の有無による振動温度の差は見られなかったものの,その温度は約4,000Kとなり,マッハ数5の場合と比べ1,000Kほど低下した.この原因は電子および分子間でエネルギー交換する時間と頻度によるものと思われる. 次に,アークプラズマ気流による真鍮製の円板モデルを使い,それが高温気流により表面が破裂する直前の成分比の変化をX線マイクロアナライザ(EPMA)を用い調べた.その結果,円板前面では銅及び亜鉛の組成比が逆転しており,圧力が低い円板側面領域では亜鉛の拡散により銅成分が急激に増加した.しかしながら円板内部の成分に変化は見られず,成分変化は物体表面のごく近傍に限られることが考えられるが,これは今後の検討課題でもある.
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