固液混相流では、一般に、媒体である液体だけを流動させたときに比べ固体粒子を分散させたときの方が流動抵抗は大きくなる。しかし、ある種の固液混相流では、液体だけのときよりも粒子を添加したときの方が、流動抵抗が低減するという現象が知られている。本研究では、この流動抵抗低減現象を固液混相流体の輸送動力削減に対して、積極的に利用する手法として確立することを目的として実験的検討を行った。 実験では、凝集剤を用いて粒子凝集体を形成し、凝集構造体形成による抵抗低減発現条件の特定を目的とした。そのため、テスト流路を製作し、水を媒体とした固液混相流に高分子凝集剤を添加し、流動抵抗の指標である圧力損失の測定を行った。高分子凝集剤には、アニオン系粉末凝集剤(アクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体)およびポリアクリルアミド(粉末状)を用いた。試料粒子には、球状のポリスチレン粒子(粒子径10μm)および非球状アルミナ粒子(粒子径4μm)、球状シリカ粒子(中位径10μm)を用い、粒子濃度を1vol%または10vol%とした。その結果、高流量域で水だけの圧力損失よりも固液混相流の圧力損失が低くなる凝集剤濃度が存在することが明らかとなった。 高分子凝集剤(ポリアクリルアミド)による凝集体形成時の管路内圧力損失の経時変化を測定した結果、凝集剤投入直後が最も抵抗減少が大きく、時間経過とともにシリカ懸濁液(=凝集剤なし)の圧力損失に漸近した。この原因としては、一般に言われているように、管路中または循環用ポンプ中のせん断流れにより高分子鎖が切断され、凝集効果が低下したことが挙げられる。一方、シリカ懸濁液に凝集剤を投入した場合と、凝集剤水溶液にシリカ粒子を投入した場合でみかけ粘度を測定した結果、シリカ懸濁液に凝集剤を投入した時には不均一な凝集体が形成され、みかけ粘度が減少することが確認された。このことから、時間経過とともに抵抗減少効果が消失する原因として、不均質な凝集体構造から均質な凝集体構造へ変化したことも考えられる。
|