研究概要 |
地球温暖化防止に貢献するため,極浅流に利用できる新たな水車,すなわち従来とは異なりロータ(ランナ)の回転面を流れに対して水平に近く取り,水深の浅い河川などで川幅いっぱいのエネルギーを吸収することを目指す"ジャイロ形ハイドロタービン"を提案した.導水管などの土木工事なしで簡単に設置することができ,水流の撹乱も少なく自然の生態系にやさしい水力発電の一方式である.本研究では,ブレード3枚からなる回転直径500mmのロータモデルを試作し,流速に対するロータ性能とブレード形状による性能の違いを明らかにすることを目的とした. まず,完全特性のわかっている反りのないNACA0018翼型からなる弦長40mmの二次元対称ブレードを用い,水車特性に及ぼす水流速度の影響を調べた.それぞれの流速における各性能曲線は似た傾向を示すものの,今回の実験範囲では相似則が成り立つとは言い難い.これは,レイノルズ数が比較的小さいためにブレードのスパン方向に層流,遷移,乱流領域が混在し,流速変化に伴うレイノルズ数の変化が揚力や抗力に影響したことなどが考えられ,今後の検討課題として残される. 次に,新たなブレードを試作した.ロータの回転面が流れに対して傾いていることによりブレードへの相対迎え角は1回転中に大きく変わる.そこで便宜上,ブレードの前縁が上流を向いたとき,半径位置によらず揚抗比が最大となるように前述のブレードにひねりを加えた.ロータの傾きやブレードの取付け角に対する単位出力の傾向はひねりのない場合とさほど変わらないが,ひねりをつけることにより約10%出力を向上させることができた.更なる出力向上のためには,今回考慮できなかったブレード1回転中における総合的なトルク増加を図る必要がある.
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