本研究では複雑な不規則粗面を固体境界とする乱流を数値シミュレーションによって解析するための粗面モデルの構築を目標としている。不規則粗面は実用的される計算機では記憶容量の制約があって十分な解像が得られないためである。このために、本年度は粗面をウエーブレット多重解像度解析法を用いて疎視化し、適切なレベルでの疎視化粗面を、粗さ高さに与えた閾値によって切り取り、得られた高い粗さの峰部分を適当な方法で、単純な形状の粗さ要素で置き換える。本研究では置き換える粗さ要素は半球とし、その体積を切り取られた峰部分のそれに等しいとした。その変換技術を確立し、モデル化粗面を得ることができた。疎視化の為にウエーブレット多重解像度解析法を導入し、これを二次元に拡張して適用した。得られた、半球群からなるモデル粗面の流れは、個々の半球の流体力で置きかえるが、そのための流体力の算定のために、さまざまな配置、粗さ高さ、レイノルズ数に対して、二方程式モデルに基づく数値シミュレーションによるデータの整備を行った。このモデル化の妥当性は検証されなければならないが、そのためには、元の不規則粗面の流れをモデル化無しに解き、モデル化粗面のそれと比較する必要がある。このためには数値シミュレーションが不可欠であるが、本研究で用いた計算機では容量が不足して確認に至らなかった。しかし、周期的な配置の半球粗さ要素をもつ円管乱流に対しては、この方法は満足な精度で管摩擦係数を与えることが分かった。したがって、今後に残された課題は多いが、方法は基本的には妥当であると考えられる。
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