研究概要 |
微小な3次元空間において顕微鏡を使って2次元面内の速度分布を計測した例は珍しくないが,瞬時の3成分速度分布計測はまだ行われていない.既存の計測技術での実施状況の調査を行い,ステレオPTV法とステレオデジタルインラインホログラフィ法にその可能性があると考えた.まず,ステレオPTV法による計測システムの開発と試験計測を行った.μ-TASやLab-On-A-Chipにおける実際の微小流路の寸法は代表径が100μm程度のものが多いことを考慮して,本研究では3次元空間の代表寸法が数十μm程度以上ものを想定し,できるだけ被写界深度を大きくするために,低拡大率と大絞り値の条件下で,高解像度ビデオカメラにより平行投影画像を撮影する方式を採った.この試作したシステムでは像の空間分解能が5μm程度と低くなったが,被写界深度は100μmに大きくできた.光学的解像度が低いと物体の境界などが明瞭に撮影できないが,PIV計測に対する悪影響はない.さらに,物体側テレセントリックレンズを採用してステレオ対応付けや3次元位置回復の計算が容易な平行投影画像が得られる.平行投影画像ではぼけた粒子像でもステレオ対応付けには利用できるので,実質的に被写界深度を拡げられる. 実験では,(1)平板上で蒸発する薄い(0.4mm程度)液滴内の流動と,(2)流路の幅100μm,奥行き30μmの流路途中に気液界面が存在する管内流動を試験計測した. 今年度は0.4×0.4mm程度の空間を1000×1000画素の画像として撮影できた.幅100μm,深さ30μm程度の流路と直径1μmのトレーサ粒子を十分な像倍率でステレオ撮影できた. ステレオデジタルインラインホログラフィによる計測手法の開発も一応の見通しが立った.
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