研究概要 |
2枚の平板間に液晶を充填し,すべての分子が平板に平行な方向に配向している状態で電圧を印加すると,壁面近傍以外の液晶分子は重心まわりに回転し平板に垂直方向に配向する.このとき平板間には流動が誘起される.この原理を応用すれば従前の機構と全く異なるアクチュエータを開発できる.すなわち本アクチュエータは,液晶という「液体」を用いるので,(1)機構が極めてシンプルである,(2)形状に関する制約を受けない,(3)原理的には連続体力学が成立する数十ナノオーダーまでダウンサイジングが可能である,という特徴を有する. アクチュエータとして「平板移動」を取り上げ,平板に作用するせん断応力を数値計算によって見積もった結果,最大で約1mPaのせん断応力が発生することを見いだした. 次に,固定された平板に少量の液晶を垂らし,その上に10mm×10mmで厚さ0.7mm,質量0.18グラムのガラス板を,300μmのスペーサを挟んで置き,12Vの直流電圧を印加して上部ガラス板の運動を顕微鏡観察した結果,15秒間に約38μmの移動が確認された. 最後に,平板間速度分布の可視化実験を行った結果,ツイスト角が0°の場合,速度分布はセル厚方向の中央面に関して反対称なS字曲線となり,この分布は印加電圧に依存しないことがわかった.ただし速度の絶対値は印加電圧が大きいほど大きい.またツイスト角が180°の場合には速度は一方向に発生し,セル厚方向の中央面で最大となることが明らかにされた.
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