研究概要 |
1.膜の両側または片側たある水溶液の存在をモデルに取り込んだ2種類のモデルについて,分子動力学シミュレーションを行った。はじめのモデルは,膜の法線方向への膜分子の運動に付随して,水溶液分子が一緒に動くとするものである。このモデルからは,水溶液の存在を仮定しないもとのモデルにおける2次相転移が,水溶液の影響で強くなって1次相転移に変化するという結果が得られた。2番目のモデルでは,膜分子が動くとき,膜分子が速度に比例する粘性抵抗を受ける場合を研究した。この場合は,相転移の性質は粘性抵抗の大きさによらないという予想通りの結果が得られた。 2.膜を構成する膜分子の数が動的に変化するモデルの相転移を,グランドカノニカルモンテカルロ法で研究し,2次相転移が有限の曲げ剛性値で起こることを示した。 3.曲げエネルギーの新しい定義に基づく膜モデルに関してMC法で相転移について調べた。その結果,表面張力を持つモデルでも持たないモデルでも1次相転移が起こることを示した。この結果は,通常の曲げエネルギーのモデルでは2次相転移が起こるというよく知られている結果と合わせて,曲げエネルギーの定義の仕方によって相転移が変わるということを示したものである。一方,既に報告されている理論的研究の結果も,1次相転移の場合と2次相転移の場合があり統一されていない。本研究の結果もこれらの理論的研究の結果を反映したものと考えられる。
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