研究概要 |
拘束噴流下における糸の空気抗力について測定を行った.実験を行った空気流は従来の研究で行われていた100m/sを超え300m/s程度まで拡張された.空気抗力について検討した結果,以下のような結論が得られた. (1)ノズル径と管路径の変化が小さく供給圧力が比較的低い場合には,管路全長にわたって速度をほぼ一定とみなすことができるが,ノズルから管路へ断面積が急拡大する場合や供給圧力が高くなってくると,ポテンシャルコアの影響で一次流と混合流の間に大きな速度差を生じ,混合流の速度のみで空気抗力を論ずることはできない.特に,ポテンシャルコアが糸に直接作用するような位置関係にあると空気抗力は大きく増加する.また,非常に細い管路では空気流により糸が管路に貼り付き空気抗力が半減するなど拘束噴流特有の現象もいくつか確認され,ノズルと管路の組み合わせや供給圧力の変化により,管路内の空気流速や拡散の様子がいろいろと異なることがわかった. (2)より高速の空気流に対しても,空気流が糸に均等に作用すれば空気抗力係数はこれまでと同一の実験式を使い半径レイノルズ数で整理することが可能で,Cf=KRea^<-n>なる式で表される.ただし,環状噴流および拘束噴流で適用される半径レイノルズ数の範囲は,吸い込み流の時に適用されるRea<500より,はるかに大きな範囲に対しても適用可能である. (3)伸縮性をもつスパンデックス糸の空気抗力係数についてはモノフィラメント糸に見られた糸の曲率の効果は認められず,半径レイノルズ数ではなく長さレイノルズ放で整理するほうが望ましい. これらの結果をもとに,空気流によって糸をさまざまに操作するための空気抗力を容易に概算することが可能になるとともに,結果的に,空気動力の軽減および糸操作の成功率向上などが期待される.
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