研究概要 |
積層型LPCVD(Low-Pressure Chemical Vapor Deposition)におけるシリコンウエハの高速かつ均一な薄膜形成に関して,希薄原料ガスの流動が成膜に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,装置を模擬した可視化実験装置による希薄ガスの可視化実験を行ったほか,数値シミュレーションによるガス流動解析を行った.一方,成膜時のウエハ温度制御に必要な放射熱物性に関して,FT-IRによる各種成膜ウエハの放射熱物性計測も併せて行った. 希薄ガスの可視化実験についてであるが,可視化装置内への供給ガス量が毎分100cc程度と非常に微量であり,しかも300pa程度に減圧した場であるため可視化は容易ではなかった.本研究では四塩化チタンを装置の下方に微量噴霧し,発生したトレーサー粒子(酸化チタン)をノズル孔近傍に吸引させることにより希薄なガス流動の可視化に成功した.可視化結果によれば,減圧場でのガス流動は極低Re数流れとなり動粘性が非常に高くなるためウエハやウエハを支持する支柱などから大きな抵抗を受けて,大気圧下で見られるような噴流の発達の仕方とは大きく異なることが明らかとなった. 次に,このような減圧場におけるN-S方程式に基づく流れの数値シミュレーションの妥当性について検討を行った.その結果,計算と可視化結果は良好に対応しており,300pa程度の減圧場においてもガス流動はN-S方程式による連続体として扱えることが明らかとなった. 一方,各種成膜ウエハの放射熱物性計測では,FT-IR(Fourier変換赤外分光光度計)に外部から赤外光を取り込めるように改造を行い,試料の単色垂直放射強度の計測を行った.まず,600℃と900℃における成膜のされていないウエハ(bare)と膜種・膜厚の異なったウエハとの比較を行った.試料は酸化膜および窒化膜付ウエハの膜厚がそれぞれ異なったものを用いた.その結果,膜種によらず膜厚が100Å程度と薄い場合にはbareと比較して,いずれの波長においても放射強度は若干低下することが明らかになった.また,3000Å程度と厚い場合には酸化膜,窒化膜ともに短波長での放射強度が10〜20%程度高くなること,600℃と900℃の温度ではbareと比較した放射特性は大きくは変化しないことも明らかになった. 以上,本年度の研究により積層LPCVDにおけるガス流動の基本的特性および各種成膜ウエハの放射特性の一部を明らかにすることができた.
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