研究概要 |
塩化カルシウム水溶液中で水平氷板が上面から融解する場合に現れる融解面の凹凸挙動,すなわちサメ肌現象を研究機関内(平成15年度〜平成16年度)でPTV装置によって詳細に観察した結果次のような挙動が明らかになった.当初(平成15年度)は融解面に現れるサメ肌現象を3次元的に捉えようと試みたが,レーザー光源の幅が小さかったため十分な3次元観察ができず課題を残した.それで,2次元観察に切り替えて多方面から観察した.容器底面に置かれた水平氷板に20wt%の塩化カルシウムを注いで融解実験を開始する.融解面に現れる濃度こう配の駆動力によって融解面の温度が降下しながら氷板は融解する.融解面に現れる濃度こう配に起因して融解面近傍の密度に分布が生じて浮力が生じ不安定になる.融解面近傍の濃度拡散層厚さが次第に厚くなってある限界(1mm以下)に達すると突然融解面近傍に濃度の薄い融解液が噴出(上昇流)するような形で融解面全域に無数に現れる.この融解水の噴出流間の距離はせいぜい1mm程度で大変小さいのが特徴である.この噴出によって,融解面に濃度の濃い下降流が現れて,融解面の融解速度が局所的に異なるため融解面に直径1mm以下の凹凸すなわちサメ肌現象が現れる.融解面の凹部に濃度の濃い溶液が遅い速度で流下し,凸部付近では濃度の薄い融解液が早い速度で上昇する.凹凸の位置は基本的には固定されているが,小さな凹部は隣接する大きな凹部に侵食されて消滅し,融解の進行につれて安定したサメ肌現象が持続する.融解面に現れる直系1mm程度の小さな渦は前記の噴出による2次的な流れであることも初めて判明した.2次元問題として,氷板の融解挙動を平滑な融解面をもつ仮定で数値解析的にも検討したが,得られた液層全域の温度・濃度複合対流は可視化観察結果と定性的に一致したが,サメ肌現象による融解促進効果は予測できず課題を残した.前記の融解面の凹凸を解析に組み込めば.さらに実際の融解挙動に近い数値的予測が可能であると考える.
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