研究概要 |
本年度はまず,ナトリウム浴焼入れ時の相変態,変形及び残留応力の予測精度の向上を目的として,炭素鋼(S45C)円柱試片及び鋼円板試験について実験を実施し,その結果と熱処理プロセス解析コードでの解析結果の比較によって解析精度の検証を行った。焼入れ時の試片の冷却曲線,焼入れ後の硬さ,試片形状・寸法,及び残留応力の測定を行い,熱処理シミュレーションによる計算値と比較した結果,これらの実測値と解析値がほぼ一致することを確認し,解析精度を検証することができた。さらに,解析結果の分析により,ナトリウム浴焼入れの高温域における均一急冷を実現できる冷却特性が,鋼部品の焼むらや焼割れ発生に抑制に有効であること,及び低温域における緩冷を実現できる冷却特性が,鋼部品に熱処理変形の抑制に有効であることを明らかにした。また,ナトリウム浴焼入れにおける均一急冷が鋼部品表面に圧縮残留応力を生成し,熱処理部品の強度を改善するのに有効であることを実験とシミュレーションにより確認した。 次に,ナトリウム浴焼入れの変形抑制効果が実際の鋼部品においても有効であることを確認するために,キー溝を有する鋼軸の焼入れ実験を実施した。比較のために実施した水焼入れや油焼入れの場合に比較して,ナトリウム焼入れの場合には鋼軸の曲がり変形が抑制されることを確認した。さらに,角穴ダイスの焼入れ実験を実施し,角穴角部での焼割れ発生が抑制されることを確認した。これらの結果より,変形が起こりやすい非対称形状の鋼部品や焼割れが起こりやすい鋼部品をナトリウム浴焼入れすることによって変形や割れの抑制を実現できることを確認した。
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