研究概要 |
壁面に沿う流れは,流体が物体におよぼす抵抗や,流体と壁面間の熱,物質移動に強い影響をおよぼすことが知られている.その構造の解明は,流体機器の高効率化にとどまらず,伝熱促進や反応促進,蒸発や凝縮の制御を行う上で極めて重要な課題の一つである. 本研究では,この流体構造の解明のために,壁面極近傍(壁面上サブミクロン下,「壁面近接場」と呼ぶ)における壁面剪断応力の可視化を目的とし,その実現に向けてエバネッセント波マッハ・ツェンダー干渉計を提案,その有用性の実験的検討を行っている.この可視化手法では,通常のマッハ・ツェンダー干渉計の観測部に台形の誘電体プリズムが置き,観測光束を台形プリズム側面から入射して,その表面で全反射した後,プリズムを出て参照光束と干渉させる.このとき,台形プリズム表面に観測光束のエバネッセント波が励起される.本平成15年度では,プリズム表面上に液体状のポリマーを流し,壁面(プリズム表面)との摩擦で生じる剪断力の大きさに応じて変わるポリマーの屈折率変化を,マッハ・ツェンダー干渉計で読み取れるかを調べた.その結果,観測光束がエバネッセント波として液体中を通過する距離が短く,剪断力に伴う屈折率変化では,マッハツェンダー干渉計で計測できるほどの十分な位相変化が生じないことが明らかとなった.干渉計測に十分な屈折率変化を与える光弾性定数の大きさについて検討した. なお,プリズム表面にポリマーの薄膜を置くことで,光弾性効果を示す液体ポリマー等を被観測流体とする必要のない新たな可視化計測手法を提案した.
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