研究概要 |
燃料の混合気形成過程の測定法である二波長レーザ吸収散乱(LAS:Laser Absorption Scattering)法の試験燃料を探索した.LAS法では,ある波長域で燃料が入射光を強く吸収するが,別の波長では吸収しない,という吸光特性を有する試験燃料が必要となる.またLAS法の光源としてNd:YAGレーザを使用するため,入射光を吸収する波長と吸収しない波長として,Nd:YAGレーザの紫外光266nmと可視光532nmを使用することになる. 燃料として軽油,ガソリンをとりあげ,これらの物性値に近い単一成分燃料の紫外から可視波長域までの吸収スペクトルを,分光器を用いて常温常圧下で測定した.試験した燃料の中から,ジメチルナフタレン,パラキシレンを,それぞれ軽油,ガソリンを模擬したLAS法の試験燃料として選定した.次にジメチルナフタレン,パラキシレンの紫外波長域での吸収スペクトルを,高温高圧吸収セルおよび分光器を用いて詳しく測定し,紫外光266nmでのモル吸光係数を求めた. 次に光源であるNd:YAGレーザ,2台のCCDカメラ,レンズ,ミラー群からなるLAS法の光学系を構築した.このLAS法の光学系を用いて,コモンレール式噴射装置から高温高圧容器中の超臨界(燃料の臨界圧力,温度を越えた)雰囲気中に噴射したジメチルナフタレン噴霧,パラキシレン噴霧の吸光度画像を撮影した.吸光度画像をLAS法の画像解析プログラムで処理して,蒸気相と液相の濃度分布,混合気温度分布,噴霧のザウタ平均粒径などを求めた.また噴射開始後の時間を大きくとり噴霧内の液相燃料が完全に蒸発した状態で求めた噴霧内の全蒸気質量と噴射量を比較して,LAS法の解析精度が十分であることを確認した. 来年度は,噴霧を自着火燃焼させた場合の燃焼・排気特性を測定し,噴霧の混合気特性との関連を考察する予定である.
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