研究概要 |
本年度は回転磁場印加実験を行うための装置の製作と基礎実験を行なった。本研究はシリコンなどの半導体単結晶製造における結晶内の不純物濃度制御を目的とし,融液に回転磁場を印加した場合の効果を検討することを目的としている。今年度の実験では回転磁場によりルツボ内融液流動がどのような影響を受けるかを実験的に検討するため,実験材料に低融点の金属ガリウム(融点303K)を用い,チョクラルスキー法結晶成長装置を模擬した系にこの回転磁場を印加した場合の影響を実験的に検討した。 実験では液体金属内の流れは可視化が難しいため,磁場印加が流れに及ぼす影響を熱電対による温度測定により調べた。実験は融液内に周期的な振動流が発生している領域(温度振幅0.5K程度)を用い,回転磁場強度と磁場回転周波数の変化が振動流の振幅や周期にどのような影響を及ぼすかを,融液内温度振動の周期と振幅の変化により測定を行い,また従来の水平磁場・垂直磁場印加の場合の実験を併せて行い,これらの結果を比較した。 結果を見ると,水平磁場印加においては温度振動の周期は磁束密度が増すと共に増加し,垂直磁場印加では磁束密度が増すと周期は減少するという反対の結果が得られた。また回転磁場の場合,磁場回転数一定で磁束密度を増すと周期は減少し,磁束密度一定で磁場回転数を増すと周期は減少した。また水平・垂直磁場の効果がほとんど現れない弱い磁束密度でも,回転磁場では磁場回転数を増加させると周期は顕著に減少し,これより従来の静磁場に対し回転磁場では融液内の流れを弱い磁束密度でも制御可能となることが分かった。 この結果を踏まえ,来年度は数値シミュレーションにより内部の流れの変化を詳細に調べると共に,結晶成長において最も重要となるルツボ内と結晶成長界面での不純物濃度の分布について検討を行う。
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