研究概要 |
本年度は実験および解析による回転磁場印加効果を検討した。 実験では昨年度製作したチョクラルスキー法を模擬した実験装置を用い,金属融液内に周期的な流れの変動である振動流が発生している条件下で,回転磁場・垂直磁場・水平磁場を融液に印加した。昨年はこの条件で,幾つかのパラメータで実験を行ったが,今年度は結晶回転数・磁場回転数・磁束密度等を変化させ,振動流の周期と振幅がこれらの条件および磁場印加方式により,どのように変化するかを調べた。この結果,水平磁場や垂直磁場などの静磁場に対し,回転磁場は同じ磁束密度でも顕著な温度振動の抑制効果があることを示し,これは磁束密度や磁場回転数に比例して強くなった。 数値解析では,上記実験と比較すると共に,実用上最も重要となる融液内の不純物濃度の制御について検討した。大口径の結晶育成における融液対流の制御には,工業的には水平磁場が主に用いられている。この水平磁場と回転磁場を比較するため,振動流発生下で内部の流れ・温度・濃度が,水平磁場と回転磁場でどのように変化するかを,主に結晶成長界面での不純物の平均濃度と濃度変動に着目して検討を行った。この結果,以下のような結果が得られた。 1.結晶成長界面における不純物濃度の時間変動の振幅は,水平・回転磁場ともに磁束密度が増加すると減少し,同じ磁束密度では水平磁場に対し回転磁場の方が振幅は小さくなった。 2.回転磁場における結晶成長界面での平均濃度は同じ磁場回転数では磁束密度が増加すると大きくなり,同じ磁束密度で磁場回転数を増加させると減少した。 3.結晶成長界面内での場所による濃度の差は,水平磁場および回転磁場とも磁束密度を増加させると減少し,回転磁場では同一磁束密度で磁場回転数を増加させると減少した。
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