研究概要 |
本年度は3年計画の最終年度として、パラメータを増やした回転磁場印加実験をおこなうとともに,水平・垂直磁場印加との比較,そして実際のシリコン結晶成長で回転磁場を印加した場合の数値解析を行なった。 1.モデル実験による回転磁場と垂直磁場・水平磁場印加効果の比較 チョクラルスキー法を模擬した実験装置を用い,モデル流体として金属ガリウムを用い,ルツボは静止した状態で結晶棒のみを回転させ,周期的な温度振動が起きている振動流域での融液内温度変化を,従来行われている水平・垂直磁場を印加した場合と,本研究で検討した回転磁場印加の場合での比較を行い,以下の知見を得た。 (1)垂直磁場印加のとき,磁束密度が増加すると温度振動の周期の変化は小さいが,振幅は顕著に減少した。 (2)水平磁場印加で磁束密度が増加すると,周期は増加し,振幅はゆっくりと減少した。 (3)回転磁場で磁場と結晶棒を同方向に回転させた場合,磁場回転数の増加とともに温度振動の周期と振幅が減少し,磁場を逆方向に回転させた場合では周期は最初長くなったあと短くなっていくという現象が見られ,また振幅は正回転にくらべ緩やかに減少した。 (4)水平磁場・垂直磁場では振動を抑えられなかった弱い磁束密度においても、回転磁場では磁場回転周波数を大きくすると振幅・周期に顕著な変化が見られた。 2.シリコン結晶成長における融液内酸素濃度の数値シミュレーション シリコン結晶成長において,従来の縦磁場と,本研究で検討した回転磁場を印加した場合での融液内酸素濃度の変化を比較検討した。 (1)回転磁場において,磁場回転数一定で磁束密度を増すと,垂直磁場に対し,結晶成長界面での平均濃度は顕著に減少し,また磁束密度一定で磁場回転数を増しても濃度は減少した。 (2)垂直磁場より回転磁場の方が広い範囲で濃度が制御でき、また結晶成長界面での面内濃度差は回転磁場の方が小さくなった。
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