研究概要 |
二重拡散自然対流は重力場で温度差ならびに溶質濃度差の二つの原因から密度差が生じ浮力となって流れが発生・持続するもので,工学あるいは環境的ないろいろな場でこの現象が存在する.環境問題では河川,湖水,海洋などへの工場廃水の流入,煙突からの煙,大気中への有害ガスの流出,都市の温暖化等でこの現象の存在が考えられる.これらの現象は熱と物質の移動を伴うが,それらの拡散の速さは異なるので,河川,湖水,海洋,大気などにおける汚染物質は二重拡散による複雑な移動現象を示す.空気中での低分子の汚染ガス成分の拡散速度は熱が拡散する速度と同程度であるが,汚染気体分子の分子量の増加に伴って拡散係数は小さくなり,ルイス数は1よりも大きくなって二重拡散現象が発生するようになる.一般的に温度浮力は上向きに作用し,空気より重いガスの濃度浮力は下向きに作用する.ここでは水平主流(一様流れまたはシアー流れ)中における汚染物質を含む煙の拡散現象を3次元数値解析した.浮力比N=1では,煙は上向の温度浮力が支配的な上昇プルームと下向きの濃度浮力が支配的な下降プルームへの分岐や煙中の熱の拡散により相対的に重くなった煙が主流の中を底に向かって落下する現象が見られる.地面に向かって流速の勾配があるとさらに地面上に蓄積されやすくなる.Ra=10^7では下流で煙のほとんどが底面に落下した.Ra=10^8では煙は温度浮力が支配的な上昇プルームと濃度浮力が支配的な下降プルームへと分岐した.しかし重い成分ガスはRa=10^7の場合と同様に大部分が底面へ落下した.Ra=10^9では煙は非常に乱れた流れになった.しかしRa=10^8の場合と同様に下流で上昇プルームと下降プルームへと分岐した.
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