研究概要 |
MCFCにおける溶融炭酸塩の揮発・反応挙動を解明するため,熱天秤による炭酸塩揮発の基礎特性および画像計測法による揮発量の定量化を行った.その結果を以下に示す. 1.熱天秤による共晶塩の揮発量と温度との関係 研究分担者が保有する熱天秤装置を用いて,62Li_2CO_3/38K_2CO_3および52Li_2CO_3/48Na_2CO_3炭酸塩の揮発基本特性(揮発量と温度との関係)を計測した結果,揮発量は双方共に雰囲気ガス中のCO_2濃度に大きく影響を受け,窒素バランス下ではCO_2濃度が1%以上であればほとんど揮発しないことがわかった.しかし,電池反応では生成水により水酸化物化しやすい雰囲気であることから,この結果が電池反応時の現象を現しているとは言いがたい. 2.画像計測法を用いた共晶塩揮発物の揮発量推定と揮発後の形態解明 メタルハライドランプにより反応部を照らし,購入した高解像度カメラを用いて揮発現象を画像計測した.その結果,気相水酸化物にCO_2を吹き込むことで画像計測は可能となりCO_2吹込み量に対し輝度飽和点を見出すことに成功し,各水酸化物の揮発量の測定に成功した.KOH,NaOH,LiOHの順で一定温度下での揮発量は多く,熱力学データから算出され量よりもかなり多いことがわかり,通常,熱力学データからはほとんど揮発されないとされたにもかかわらず,実機で生じていた触媒汚染や配管閉塞現象を裏付けるデータとなった.これらの結果を機械学会,可視化情報学会およびGrove Fuel Cell symposiumにて報告した. 3.画像計測用窓を有するDIR-MCFC単電池の設計 電池反応は3相界面で生じるため,生成ガスに伴って飛散する炭酸塩揮発物は,電極表面付近の画像計測で観測できると考え,アノード電極表面を観測できるように観測窓および流路を深くした電池枠の設計および試作を行った. 今後,1.における炭酸塩揮発の基本特性において,2.で使用した実験装置を用いて水蒸気による揮発特性への影響を検討すると共に,2.で得られた画像計測法により3.にて試作した電池枠を用いて,発電中のアノード電極近傍の画像計測を行うことで,触媒汚染物質である炭酸塩揮発機構の解明を行う.
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