研究概要 |
建設現場における機材等の搬送作業は複数の熟練作業員に依存しており,作業の効率化を図るシステムの開発が課題となっている.本研究では重量物の搬送作業を一人または少人数で効率よく行うことが可能な「パラレルワイヤ機構を用いた人間・機械協調型リフティングシステム」を提案し,その開発を主な目的とする. 本システムは複数のワイヤの巻取り速度を同時に制御することで制御対象に目的の動作を与える「パラレルワイヤ機構」と,操作者が対象物を運搬する際に加えた入力を基に最適なアクチュエータの出力を決定して人間の動作をアシストする「人間・機械協調型リフティングシステム」を組み合わせたもので,操作者は人間のもつ優れた感覚を生かしながら機械と協調して重量物を搬送することができる. 本研究は現有装置に即した水平・鉛直・回転の3自由度を有する2次元平面モデルを対象とし,下記の知見を得た. 1.対象物移動速度とワイヤ巻取り速度の関係を定義するヤコビ行列の逐次更新を利用した対象物移動制御手法を提案した. 2.上記1の手法を適用した実験で対象物の連続的な移動を確認したが,ヤコビ行列の更新値と理論値に誤差が生じ,操作者の意図した移動(目標)と実際の移動に差が見られた. 3.上記2の誤差を補償し,目標移動をより正確に実現するため,上記1の手法に対象物移動速度フィードバックを付加した制御手法を提案した. 4.本システムでは取得困難な制御対象の並進方向移動速度を幾何学計算により推定する手法を提案した. 5.提案手法を適用した対象物移動シミュレーションを行ったところ,目標と一致した結果が得られ,提案手法の実現可能性を確認した. 6.現有装置においてワイヤ3本で対象物モデルを吊った場合に提案手法を適用し,対象物移動実験を行ったところ,目標とほぼ一致した対象物移動が観測され,提案手法の有効性を確認した.
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