研究概要 |
転走試験台上の模型の一軸台車装置に荷重移動機構を付加し,静止輪重比の条件を変えながら車輪フランジの乗り上がり実験を行った.この実験では,車輪アタック角の増加とフランジ接触側車輪の輪重減少により,外力が作用しなくてもフランジ乗り上がりが発生する可能性のあることを確認した.また,脱線に要する外力の強さに対しては,静止輪重比よりもアタック角による影響のほうが大きいという結果が得られた. 続いて,荷重移動機構により輪重を動的に変化させながら,フランジ乗り上がり脱線の実験を進めた.実験データに基づいて数値解析モデルを改善し,脱線現象の模擬を試みた結果,輪重の減少に対応して車輪の浮き上がり量が増加すること,アタック角が増加すると輪重の減少量が小さくても脱線が生ずることなど,実験と数値解析で同様の傾向が示された.また,アタック角,輪重および外力を固定した条件では,実験と数値解析の双方で車輪の浮き上がり量が一定となる傾向が確認された.ただし,輪重を動的に変化させた場合には,両者の浮き上がり量には必ずしも一致しない部分が残った. 以上,車輪フランジ乗り上がり脱線には車輪アタック角の影響が大きいため,アクティブ操舵台車によりアタック角を減少させることは走行安全にとって有効である.しかし,制御の不調によりアタック角が増加することも想定されるため,アタック角の増加により車輪・レール間の接触状況が三次元的に変化する状況を調べ,二次元のままの接触状況と比較した.その結果,アタック角が大きいほど,フランジ部の接触点は前方に移動することが示された.この三次元接触パラメータを用いて,車輪軸モデルによる脱線シミュレーションを行った結果,二次元接触パラメータよりも早く脱線する傾向が得られた.これは,アタック角が大きくなる急曲線での脱線を解析する場合,三次元の接触パラメータを用いるのが望ましいことを意味する.
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