研究概要 |
本研究はびびり振動の発生を回避するという目的で、びびり振動発生の判別に関するファジィニューラルネットワーク(FNN)について研究してきた。判定についてはある程度のレベルが達成できたと考えられる。その際に問題となるのは、実環境での振動データの取得を容易に行うということである。可能な限り加工過程に影響を与えない点を考慮すると、加速度センサ等を被作物および工作機械に取り付ける必要のない手法が望まれる。 平成16年度においては、マイクロフォンにより得られた測定音の中から目的の機器の信号を抽出する手法について研究を行った。測定された複数の信号の中から先見的な情報なしに、それらに含まれる個々の信号成分を抽出することをブランドソースセパレーション(BSS)問題といい、独立成分分析(ICA)により可能となることが報告されているが、機械工学分野での応用はまだ少ない。そこで、BSSの手法を切削音の抽出に利用するための手法を検討した。本年度は、ICAを実現するためのプログラムの作成を行い、シミュレーションにより分離性能を確認した後、実際にマイクロフォンで測定した音を用いた分離実験を行った。ここでは,時系列信号を取り扱うことになるので、線形フィルタ形式のICAを適用した。その際に、時間領域法と周波数領域法が存在するが、本研究ではウェーブレット変換と時間領域法を組み合わせた手法を提案した。シミュレーションにおいて、近接する振動数を持つ正弦波の分離において従来のFFTを用いる手法に対する優位性が示された。また、音響データに関して行った数値実験では、提案した手法はよい分離性能を示した。しかしながら、実験では分離が不十分および不可能な信号が存在したため、本年度は切削音への応用を行うに至らなかった。実環境では反射音等により十分な分離性能を得られていないため手法の改良が必要であることがわかった。
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