研究概要 |
本研究はびびり振動の発生を回避するという目的で、びびり振動発生の判別に関するファジィニューラルネットワーク(FNN)について研究した。平成15年度においては,ファジィニューラルネットワーク(FNN)モデルの最適構造を得るための考察を行った。本研究で取り扱っているFNNモデルは、切削条件と切削音を入力とする構造となっている。切削音部はウェーブレット変換を行い時間・周波数解析を行っている。平成16年度は、ウェーブレットパケット解析を行い周波数成分の抽出をきめ細かく行うようにした。これにより入力部のニューロン数設定の自由度が生じる。すなわち、昨年度は切削音のデータ数とサンプリング時間により決定されていた入力層のニューロン数を種々に設定することができるため、判別に必要なネットワークの大きさを変化させて検討することができた。また、FNNの中間層を切削条件部分および切削音部分に分離させた構造(ブロック構造と呼ぶ)を提案し中間層のブロックの大きさについての考察を行った。判定についてはある程度のレベルが達成できたと考えられる。その際に問題となるのは、実環境での振動データの取得を容易に行うということである。可能な限り加工過程に影響を与えない点を考慮すると、加速度センサ等を被作物および工作機械に取り付ける必要のない手法が望まれる。平成17年度においては、16年度に行ったブランドソースセパレーション(BSS)に関する独立成分分析(ICA)の手法を再構築することにより、本手法を切削音の抽出に利用するための手法を検討した。本年度は、信号源の復元のために工作機械の動特性を考慮することが重要であると考えられるので、振動しているシステムの特性についても同定する手法について考えた。昨年度のICAを実現するためのプログラムを拡張して、離散時間データの時系列を扱う拡張状態方程式の形式ICAを適用した。ICAの時系列広帯域の周波数成分を持つM系列による入力を予測するシミュレーションにおいては、信号原およびシステムの同定は満足する結果が得られたが。実際の信号を対象にした振幅および振動数が変動する信号原には十分な結果が得られなかった。実環境では反射音等によりさらに複雑になると考えられるので、今後も手法の改良が必要である。
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