研究概要 |
血管内を移動する医療用マイクロマシンなどを対象にした場合,細管内の流れは層流の低レイノルズ流れであると共に,面積力である粘性力が体積力に比べ無視できない.さらに,流路壁と物体との距離が狭いことにより,物体運動と流体運動の非線形連成の効果がより強く現れ,力学的に極めて不安定な現象の発生が予想される.しかしながら,その3次元的な現象の解明は目下のところ極めて難しい. そこで本研究では,最初に,管路内に弾性支持された球の運動を実験的に調べ,流れによる球の運動の安定性を明らかにしたのち,一定速度で落下する球が落下運動する場合に着目して,球の運動と周囲の流体運動との相互作用を詳細に調べた. すなわち密度ρ,動粘度υの静止流体で満たされた内径Dの細い流体管路内で管軸方向に重力Gによる一定外力を受ける直径D_S,密度ρ_sの球の運動と管内非定常層流の特徴について数値解析および実験により明らかにした.数値解析では流れ場を軸対称と仮定し,MAC法による数値解析を行った.その際,無次元パラメータであるガリレイ数Ga=D_S^3G/υ^2,流路直径比d=D/D_S,および流体と物体の密度差比α=(ρ_s-ρ)/ρのうち,Gaを一定とし,dおよびαを変化させた.その結果,主に以下のような結論が得られた. 1.球の無次元終端速度ν_<bter>=V_<Bter>υ/αD_S^2Gは,dが小さい場合は密度差比とガリレイ数の積αGaに依存せずν_<bter>はほぼ一定である, 2.細管内を移動する球まわりの流れ場の流線は楕円形状であり,楕円の中心は球表面からわずかに離れた位置にある.そして球後方の流線はαGaが大きいほど後方へ伸びる. さらに力学的相似則を考慮した相似模型実験を行い,流路内を移動する球のν_<bter>とdおよびα=(ρ_s-ρ)/ρとの関係,球周りの軸対称流れ場の特徴をPIV計測により捉え,数値解析で予測された結果と定性的に一致する実験結果を得た.
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