研究課題
基盤研究(C)
車両の衝突事故において、乗員の肺と肋骨、もしくは、脳と頭蓋骨の相対量を安全な値に制限できれば後遺症の発生が抑えられる。これらを実現するには、シートベルトの張力やヘルメットの剛性を瞬時にコントロールできる衝撃制御システムが必要である。そこで、まず衝撃力そのものを発生させるアクチュエータを必要としないことから実現が容易なセミアクティブ衝撃制御を提案した。次に、スライディングモード制御理論を適用して制御システムを構築し、斜めに配置された12本のローラーが回転しながら滑ることで静摩擦から動摩擦への移行が滑らかで高速な応答が期待できる摩擦装置を用いて張力制御装置を開発した。そして、ばねで結合された2つのブロックを斜め上方からリニアガイドに沿って落下させて固定されたプラスチック製ケースに衝突させ、ブロックに掛けられた釣り糸の張力を変化させることでブロック間の相対変位を制御する実験装置を製作、制御実験を実施し、セミアクティブ衝撃制御システムの有効性を確認した。この結果をもとにアクティブシートベルトシステムを構築し、一般的な成人、代表的な乗用車のパラメータを用いて数値シミュレーションを実施した。その結果、衝突時に肺と肋骨の相対変位を許容値まで自然に、すなわち、ステップ応答の変位と速度に合わせて増加させ、許容値に保つことで、乗員の車内移動を抑えながら肺と肋骨の相対量を安全な値に保てることを示し、アクティブシートベルトの有効性を明らかにした。さらに、リニアモータを利用した約1/10スケールのアクティブシートベルト模型を製作、約1msの制御サンプリング周期に追随でき、最小張力がほぼ零まで下げられる張力制御用アクチュエータを製作し、制御実験を実施した。その結果、胸部模型の相対変位が滑らかに目標値に追随して大きくなりほぼ目標値の20%以内に保てることを確認、アクティブシートベルトの実現可能性を示した。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
日本機械学会論文集 C編 71巻・705号
ページ: 1521-1528
Transactions of the Japan Society of Mechanical Engineers Vol.71,No.705,Ser. C