研究概要 |
本研究の目的は,宇宙用遠隔操作を想定したマスタスレーブシステムにおいて,スレーブアームの柔軟性が操作性能を悪化する問題に対して,オペレータへの操作支援のためのコントローラを提案し,実機での検証実験を行うことにある.本年度は,以下の3点について実施した. 1.一般に広く用いられている力帰還型バイラテラル制御法に対し,スレーブアームの歪み情報を用いた振動抑制のための操作支援型コントローラを新たに提案した.この操作支援は,熟練者の操作技量の模倣に基づいており,以下の3つからなる.(i)スレーブアームの自律的動作による支援,(ii)振動抑制促進のためのオペレータへの反力提示による支援,(iii)人間の意志理解に基づく(i)の付加タイミング制御による支援.提案手法の有効性を実験システムを用いて評価し,その結果,提案法が操作性と操作感に優れた特性を持つこと示された.(詳細を2.に示す.) 2.提案法の3つの支援効果を個別に,操作性と操作感の両方から評価した.特に,操作感の評価として,SD法と主成分分析による主観的評価法を新たに提案した.この結果,(ii)の操作支援が,定量的な評価の下で最も効果が高かった.これは,支援において,マスタとスレーブの同期性が保たれることが重要であることを示している.一方で,例えば摩擦などの機構上の理由からマスタに操作遅れなどが生じる場合,マスタとスレーブの同期性が保たれない.この場合,(ii)の機能に加えて,(i)(iii)によるスレーブの適切な自律化が,操作性と操作感を向上させることが示された. 3.提案法は1自由度マスタスレーブマニピュレータに対する基礎的な検討である.今後提案法の実用的な展開のために,4自由度マスタスレーブマニピュレータの設計,製作を行った. 今後,提案コントローラを4自由度マニピュレータへ拡張し,この実験的検証を行うと共に,実用化の観点からの見直しを行う.
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