研究概要 |
本研究では,電力あるいはそれに付随するサービス・価値を売買するマーケットを用いて,分散電源群の行動を間接的にコントロールするマーケットベースマネージメントの枠組みを検討することを目的としている.今年度は,前年度に開発したマーケットモデルを用いて,分散電源およびそれらを群としてまとめた発電事業者の行動に関するシミュレーションを実行した.このとき,各分散電源が複数の市場に対してどのように入札すればよいかを決定する必要があり,本研究では強化学習の概念を適用した.今年度に得られた成果は以下の通りである. 1.環境価値を売買するマーケットによるマネージメント:エネルギー証書市場をマルチエージェント理論とQ-learningを用いてモデル化しシミュレーションを実行した.その結果,エネルギー証書市場の導入により再生可能エネルギー発電事業者がコスト回収できるだけの収入を得ることができること,それに起因する電力価格の増加は証書の取引量が電力の取引量に比べるとかなり小さいことから,あまり大きな影響を与えないことなどがわかった.また,証書の需給バランスが再生可能エネルギー発電事業者の収入に大きな影響を与えることも確認できた.最後に,Q-learningにより学習することで適切な行動をとるための基準が作成され,市場でとるべき行動の一例を示すことができた. 2.信頼性価値(予備力)を売買するマーケットによるマネージメント:予備力保障を一般電気事業者が行う形態(供給保障委託モデル)と,市場を通して予備力を確保する形態(リザーブ市場保障モデル)の2つのモデルを想定し,自由化された電力系統において,望ましい供給保障のあり方を検討した。シミュレーションにより,予備力市場の価格は需要曲線の特性などの市場形態及び,新規参入者が提供することが可能な予備力の上限値に強く影響される結果となった。
|