研究概要 |
水トリー劣化による絶縁破壊事故を未然に防ぐために,交流電圧印加における損失電流波形を測定する手法の開発が進んでいる.損失電流は試料を流れる電流からその充電電流を取り除いたものであり,その波形の観測・評価から高調波成分を含む損失電流の発生メカニズム解明が行えると考えられている.本研究では格子状に配置した静電容量と抵抗からなるXLPEの等価回路の一部を,水トリーを模擬した電圧依存型抵抗(VDR)に置き換えることにより,水トリー劣化したXLPE試料の等価回路モデルを作製し,回路シミュレータにより損失電流波形の計算を行った。その結果,(1)本研究で提案した等価回路モデルにおいて,貫通水トリーの電圧-電流特性の実測データよりVDRの特性を適切に設定することにより貫通水トリーの電圧一電流特性を正確に表現できることが分かった.また,水トリーの進展に伴う損失電流波形の変化をシミュレーションしたところ,過去に報告されている結果とよく一致することが分かった.これらのことより,本研究で提案した等価回路モデルおよびこれを用いた解析手法は妥当であると考えられる. (2)水トリーの形状を変え損失電流波形の変化を検討したところ,試料内のトリーの全長が等しくても,その形状が異なると損失電流波形には大きな違いが見られることが分かった.また,電界方向へのトリーの伸びが等しくとも,水トリーの横方向への広がり方が異なると損失電流波形に違いが見られることが分かった. また,次年度の実験データ収集に向け,実験装置の構成を検討した.
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