超伝導エネルギー貯蔵装置(SMES : Superconducting Magnetic Energy Storage)は有効電力と無効電力の両方を高速かつ独立に制御することが可能で、高頻度の充放電に耐えられるため、電力系統の安定化や電力品質の改善のための応用が期待されている。最近は、同一仕様の小規模SMES(マイクロSMES)を複数台設置することによって、電力系統の電圧問題を解決しようとする試みがなされている。これらの分散配置されたマイクロSMESを、情報通信網を介して有機的に結びつけて統合的に制御すれば、さらに制御効果を向上できるものと期待される。本研究では以上のような観点から、例題系統における発電起動用の抑制を目的として、SMESの配置、制御ゲインの最適化をタブーサーチにより行うことについて検討した。また、SMESへの制御入力として遠隔地信号を用いた場合の優位性を、ローカル信号のみの場合と比較検討した。得られた主な成果は以下の通りである。 1.SMESの最適な配置と制御系の最適なゲインの両者を、タブーサーチ手法を用いて統合的に決定するアルゴリズムを確立し、その有効性を確認した。 2.SMESの設置により、位相角の第一波動揺のピーク値が抑制でき、第一波動揺後の振動の減衰を改善できることが明らかになった。 3.位相角偏差を評価関数として最適化を行った場合、遠隔地信号を用いたSMESの制御系では位相角の2乗偏差は減少するが、第一波動揺後に周期の短い動揺が発生することが明らかになった。 4.角速度偏差に重み係数βを乗じた値と位相角偏差の和を評価指標とした場合、ローカル信号のみを用いた制御系ではβの増加とともに位相角偏差は悪化する。遠隔地信号を用いた場合は、βの増加とともに第一波後の位相角動揺の抑制が改善されることが明らかになった。しかし、βの値が大きすぎると位相角の収束に要する時間が増加する。 5.βの値を適切に選んで最適化すれば、遠隔地信号を利用する方が位相角動揺の改善効果が大きい。 以上、マイクロSMESの分散配置による系統安定化に関して、最適配置ならびに最適な制御系の決定手法に関して有益な知見が得られた。
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