研究課題/領域番号 |
15560246
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
木谷 勇 愛媛大学, 工学部, 教授 (20036396)
|
研究分担者 |
門脇 一則 愛媛大学, 工学部, 助教授 (60291506)
|
キーワード | 圧力波 / ウェーブレット / 時間周波数解析 / 電力ケーブル / ポリエチレン / トリー / 炭化 / アクリル酸エチル |
研究概要 |
電力用ケーブルの劣化部位を、活線状態のままで非破壊にて推定するための手法として、ウェーブレット解析を用いた圧力波検出法を提案し、その有効性について検討してきた。本年度は、針電極の挿入されたブロック状のオレフィン系高分子絶縁材料を試料として、針先に形成されたトリー管内での部分放電により発生する圧力波を、平板電極背後に貼られた圧電素子にて計測し、その時間周波数解析結果から材料内部の劣化状態の把握を試みた。得られた成果を以下に要約する。 正弦波交流電圧の印加によりトリーが徐々に成長するのに伴い、圧力波信号の時間周波数特性が次のように変化することが解析によりわかった。成長初期の微小トリーから伝搬する圧力波の周波数帯域は狭いのに対して、大きく成長したトリーの場合、比較的周波数の高い圧力波が伝搬した後、引き続いて周波数の低い圧力波が伝搬した。圧力波の伝搬時間からその発生部位を調べた結果、高周波成分はトリーの先端領域から伝搬し、低周波成分は針電極近傍のトリー後方から伝搬していることが明らかとなった。 交流電圧を数時間以上印加した場合、最初のうちは圧力波の低周波成分と高周波成分ともに、それらの強度が大きくなった。しかしある程度トリーの成長が進行した時点から、低周波成分のみが消滅するという現象が認められた。このことは、トリー後方からの圧力波伝搬が止まったことを意味している。劣化した試料の断面観測の結果、低周波成分の消滅が観測された試料のトリー根元部は著しく炭化していた。この結果から、圧力波の時間周波数特性を観測することにより、内部の炭化劣化状況を把握できることが明らかとなった。さらに本手法を用いて、純粋なポリエチレンのブロック試料と、極性基としてアクリル酸エチル基が混じった試料との間で劣化の進行過程を比較した。その結果、極性基の若干量の添加により、内部の炭化が抑制されるという事実を見出した。
|