二次元ベクトル磁気特性導入による高配向性電磁鋼板を用いた高効率モータの開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15560248
• 研究機関: 大分大学
• 研究代表者: 榎園 正人 大分大学, 工学部, 教授 (40136784)
• キーワード: 二次元磁気特性 / ベクトル磁気特性 / 電磁鋼板 / 高効率 / モータ / 省エネルギー / 低損失 / 方向性

研究概要

高磁束密度1.2T〜2.0T級の回転機を開発することを目的とする。そのために使用する鉄心材料として高配向性電磁鋼板が用いられる。しかしながら、従来の技術でこれを遂行するのは難しい。本研究ではその基礎となる概念として、二次元ベクトル磁気特性が重要な起点となる。二次元ベクトル磁気特性とは磁トルと磁界強度Hベクトルのベクトル関係を表わすものである。この観点から見れば往来の磁気特性は大きさのみに着目したスカラー磁気特性(一次元磁気特)ということになる。このような特性表示では方向によって異る磁気特性を持つ異方性材料を取り扱うことはできない。他方、従来回転機に使用されてきた無方向性電磁鋼板といえども、モータ鉄心内では回転磁束並びに回転磁界が発生しており、その時の磁気特性もヌベクトル磁気のみ取り扱うことができる。
次いで、高効率モータを開発するには、鉄損の低い電磁鋼板を使用することが望まれる。画期的なモータを開発しょうとする時、低損失材料を使用して作製することが効果的である。そのような中で高配向性電磁鋼板の鉄損は従来用いられている無方向性電磁鋼板の1割程度で著しく低い。その反面この材料は強い異方性を示す。仮にこの強い異方性材料である高配向性電磁鋼板を有効に使うことができれば従来機を凌ぐ新しい技術に基づいたモータを開発することが可能となる。本研究ではその重要な技術基盤として、測定法、磁気特性のモデリング、設計法の構築について研究を行ってきた。これまでに、ベクトル磁気特性測定装置としてベクトルヒステリシスアナライザーの開発、ベクトル磁気特性のモデリングとしてE&Sモデル、設計法としてコンピュータシミュレーションによる磁界解析に代わる磁気特性解析法の確立を成した。これらを基礎として本年は方向性電磁鋼板のセグメント片の組み合わせによる回転機鉄心を設計し試作に着手した。

研究成果

• [文献書誌] M.Enokizono, H.Shimoji, T.Horibe: "Effect of Stator Construction of Three-Phase Induction Motors on Core"IEEE Transactions on Magnetics. MAG-39, 3. 1484-1487 (2003)
• [文献書誌] M.Enokizono, S.Takahashi, T.Kiyohara: "Magnetic Field Analysis of Permanent Magnet Motor with Magnetoanisotropic Materials Nd-Fe-B"IEEE Transactions on Magnetics. MAG-39, 3. 1373-1376 (2003)
• [文献書誌] T.Kawashima, M.Enokizono: "Magnetic Field Analysis of Ferrite Core by using Chua-Type-Model"IEEE Transactions on Magnetics. MAG-39, 3. 1558-1561 (2003)
• [文献書誌] M.Enokizono, H.Matsuo: "A measurement system for two-dimensional DC-biased properties of magnetic materials"Journal of Magnetism and Magnetic Materials. 254-255. 39-42 (2003)
• [文献書誌] H.Shimoji, M.Enokizono: "E&S^2 model for vector magnetic hysteresis property"Journal of Magnetism and Magnetic Materials. 254-255. 290-292 (2003)
• [文献書誌] T.Todaka, T.Kiyohara, M.Enokizono: "Boundary Element Method for Magnetic Field Problems Expressed with Full Reluctivity Tensor"JSAEM Studies in Applied Electromagnetics and Mechanics. 14. 105-111 (2003)