従来、研究代表者らが行ってきたスペクトル拡散多重通信技術の研究成果を基に、パワーエレクトロニクス技術を応用し、伝送する電力そのものに情報も持たせ(本研究ではこれを情報化電力と呼ぶ)、一対のワイヤ(動力線)のみで多数のデバイスを駆動するための情報化電力の伝送を非干渉かつ簡易な回路構成で行う情報化電力伝送システムの実現を目指して研究を行っている。 本年度の研究では、昨年度までに製作した7チャンネルの情報化電力伝送が可能な多重伝送システムの問題点の改善を行った。昨年度までは受信機に接続されたDCモータの回転速度が安定しない、すなわち受信機側において送信された情報化電力が復調された際に、その電圧値が安定化しないという問題があった。これを改善するため、PWMアンプのパルス数の増加と受信機側に還流回路を付加する改善を行い電圧の安定化を実現した。また、同期信号は情報化電力とは別のケーブルにおいて伝送する必要があったため、目的とする一対のワイヤでの伝送が実現されていなかった。このため、送信機・受信機をそれぞれ改修した。送信機は同期信号注入回路を付加し、情報化電力に微弱な同期信号を重畳させる方式とした。受信機はこの同期信号を取り出し符号の同期を確保・維持するための回路を付加した。この改良伝送システムを用いて実験を行い、受信機負荷部に接続された7つのDCモータが従来伝送システムより安定化した回転速度で駆動しているのが確認された。これにより研究目的としていた同期信号も含めての一対のワイヤで駆動することが実現できた。
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