研究概要 |
従来,研究代表者らはスペクトル拡散多重通信技術を応用してシステムの信号線を省線化する研究を行ってきた。本研究ではこの技術を応用し,伝送する電力そのものに情報を持たせ(本研究ではこれを情報化電力と呼ぶ)一対のワイヤ(動力線)のみで多数のデバイスを駆動するための情報化電力の伝送を非干渉かつ簡易な回路構成で行う情報化電力伝送システムを提案し,その実現の可能性の検討を行った。まず,ユニポーラM系列符号を用いることで,スイッチング素子を用いた簡単なシステムで非干渉スペクトル拡散多重通信を行えることを示した。提案するシステムの通信特性を理論的に明らかにし,従来のスペクトル拡散多重通信システムと比較して,多重通信の性能が優れていることを示した。これを踏まえて,本通信システムの概念を用いた電力と制御情報の一体化伝送手法として情報化電力非干渉多重伝送システムを提案しそのシステム構成を示し,DCモータを独立にオープンループにより5段階の速度制御駆動が可能なシステムを研究・開発した。同期手法には従来研究代表者らが提案してきた継続的同期法を用い,増幅用PWMアンプにはユニポーラPWMを用いることとした。製作した実験システムにおいてDCモータ駆動実験を行つた結果,各モータに供給された電圧の平均値は全チャンネルの平均電圧に対して小さいばらつきとなり,各モータの回転方向を対応するチャンネルの情報信号で制御することができた。これより電力自身に複数の制御情報を持たせて一対のワイヤのみで情報化電力を伝送し,同時に複数の負荷を独立かつ安定に駆動できることが示され,提案システムの有効性を検証できた。
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