高圧架空配電系統において、絶縁電線は、電柱にがいしとバインド線により支持されている。配電線の近傍に落雷が生じた場合、電線の心線には誘導雷サージ電圧が侵入する。このサージ電圧が、電線支持点に到達すると、がいしの絶縁破壊に続きバインド線先端から電線表面に沿って沿面放電が進展する。この沿面放電が、電線溶断などの災害の原因となる。このような災害を未然に防ぐためには、沿面放電現象の特性解明が重要となる。 今年度は、誘導雷サージの波頭長T_f(1.2≦T_f≦20.0μS)が電線表面を進展する正極性、負極性沿面放電にどのような影響を及ぼすかを観測し、以下のような新しい知見を得た。 1、正極性沿面放電 (1)進展長について 波頭長が変化しても進展長は影響を受けず、印加電圧波高値の上昇とともに単調に増加する。(2)進展様相について 波頭長が変化しても進展様相は影響を受けず、バインド線先端から放電先端まで電線表面をジャンプしながら進展する。 2、負極性沿面放電 (1)進展長について 波頭長が標準雷インパルス程度であれば、印加電圧波高値の上昇とともに進展長の増加する領域と減少する領域が明確に現れる。しかし、波頭長の増加とともに、進展長の減少する領域は減少する。波頭長が、8.0≦T_f≦20.0/μSの範囲では、進展長は波頭長によって変化せず、印加電圧波高値の上昇とともに単調に増加するようになる(2)進展様相について 波頭長が標準雷インパルス程度であれば、印加電圧波高値が70kV以上では、バインド線先端で電線表面に密着するが、放電先端では、電線表面からジャンプする様相となる。しかし、波頭長が長くなるに連れて、放電先端のジャンプ現象は抑制され、波頭長が8μs以上では、放電先端でも電線表面に密着する様相が現れる。負極性沿面放電では、波頭長の変化に応じて、進展様相が変化し、それが進展長に影響を与えていることが明確になった。
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