高圧架空配電系統において、絶縁電線は、電柱にがいしとバインド線により支持されている。配電線の近傍に落雷が発生した場合、電線の心線には誘導雷サージ電圧が侵入する。このサージ電圧が、電線の支持点に到達すると、がいしの絶縁破壊に続きバインド線先端から電線表面に沿って沿面放電が進展する。この沿面放電が、電線溶断事故などの原因となる。このような災害を未然に防ぐためには、沿面放電現象の特性解明が重要となるが、現在では未解明な点が多く存在している。 今年度は、誘導雷サージの波高値V_m(V_m≦80kV)、波頭長T_f(20.0<T_f≦100.0μs)が電線表面を進展する正、負極性沿面放電にどのような影響を及ぼすかを観測し、以下のような新しい知見を得た。 1、正極性沿面放電 (1)進展長について 波頭長の値に関わらず波高値の上昇とともに単調に増加する。しかし、波頭長の増加と共に進展長は抑制され、T_f=100.0μsの場合では、T_f=20.0μsの場合より約50%減少する。 (2)進展様相について 波高値、波頭長が変化しても影響を受けず、電線表面をジャンプしながら進展する。 2、負極性沿面放電 (1)進展長について 波頭長の値に関わらず波高値の上昇と共に単調に増加し、T_f≦5.0μsで現れるような進展長の減少領域は見られない。また、波頭長の増加と共に進展長は抑制される傾向を示し、T_f=100.0μsの場合では、T_f=20.0μsの場合より約70%に減少する。 (2)進展様相について 波高値、波頭長の値に関わらず放電は電線表面に密着して進展し、T_f≦5.0μsで現れる放電先端のジャンプ現象は見られない。20.0<T_f≦100.0μsの範囲では、放電先端が電線表面に密着するため、進展長は、波高値の上昇と共に単調に増加することが判明した。
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