高圧架空配電系統において、絶縁電線は、電柱にがいしとバインド線により支持されている。配電線の近傍に落雷が発生した場合、電線の心線には誘導雷サージ電圧が侵入する。このサージ電圧が、電線の支持点に到達すると、がいしの絶縁破壊に続きバインド線先端から電線表面に沿って沿面放電が準展する。この沿面放電が、電線溶断事故などの原因となる。このような災害を未然に防ぐためには、沿面放電現象の特性解明が重要となるが、現在では未解明な点が多く存在している。本研究では、誘導雷サージの波高値V_m(V_m≦80kV)、波頭長T_f(1.2≦T_f≦100.0μs)が、電線表面を進展する正、負極性沿面放電にどのような影響を及ぼすかを観測し、以下のような新しい知見を得た。 1、正極性沿面放電 (1)進展長について T_fに関わらずV_mの上昇と共に単調に増加する。しかし、T_fの増加と共に進展長は抑制される。(2)進展様相について V_m、T_fが変化しても影響を受けず、電線表面をジャンプしながら進展する。 2、負極性沿面放電 (1)進展長について T_f=1.2μs程度であれば、V_mの上昇と共に進展長の増加、減少領域が現れる。しかし、T_fの増加と共に、進展長の減少領域は縮減する。8.0≦T_f≦100.0μsでは、V_mの上昇と共に進展長は単調に増加するようになる。しかし、T_fの増加と共に進展長は抑制される傾向を示す。(2)進展様相について T_f=1.2μs程度であれば、V_m≧70kVでは、バインド線先端で電線表面に密着するが、放電先端では、電線表面からジャンプする様相となる。T_f≧8.0μsでは、ジャンプ現象は抑制され、V_mの値に関わらず放電先端でも電線表面に密着する様相が現れる。負極性沿面放電では、T_fの変化によって、進展様相が変化し、それが進展長に影響を与えていることが明確になった。
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