次世代の高保磁力永久磁石、超高密度磁気記録技術及び「スピンエレクトロニクス」などの新分野の研究には磁性体に特有の、磁区の観察が非常に重要である。特に永久磁石中の単磁区粒子の磁壁移動および磁気記録媒体中の磁区を高い磁場感度と空間分解能で定量的に評価することが必須である。 研究代表者SANDHU ADARSHは2003年3月にGaAs/AlGaAs系半導体マイクロ・ホール・プローブを有する室温走査型ホール・プローブ顕微鏡装置の開発を行ない、世界に先駆けて0.8μmの高空間分解能で、かつ室温での磁区の観察に成功した。ただ、GaAs/AlGaAs系半導体マイクロ・ホール・プローブに存在する表面空乏層のために微細化が約0.8μmまでに制限された。 本研究ではホール素子の微細化の制約を克服する方法として、空乏層を形成しない半金属であるビスマス(Bi)の物性に着目し、空間分解能向上の可能性を確認した。初期実験ではに、Bi粉を用いて真空蒸着で多結晶薄膜をGaAs基板上に形成し、次に集束イオンビーム加工技術により寸法120nm x 120nmサイズのホール素子を作成した。さらにこの素子の性能を向上する必要があることが判明した。 平成16年度は初年度得られた成果を元に、Biナノ・ホール・プローブ素子の作製及び同素子を用いたRT-SHPM装置の実証実験を行った。具体的には光露光技術と集束イオンビーム技術を複合した作製工程を用いて、微細な50nmx50nmのBiナノ・ホール・プローブ素子の作製した:作製工程は次のとおりです:GaAs、及びグラス基板の全面をフォトレジストで覆い、光露光技術を用いてフォトレジストの定位置に、‘十字型'の高移動度Bi薄膜蒸着用の窓を開け、(1)多結晶Bi薄膜を蒸着する;(2)リフトオフにより、‘十字型'の多結晶Bi薄膜領域を残す:‘十字型'多結晶Bi薄膜の寸法は10μm x10μmで、基板の角から20nmであった;(4)前年度開発した最適条件で‘十字型'多結晶Bi薄膜を加熱し、高移動度(1000cm^2/Vs)単結晶Bi薄膜を形成する;(5)集束イオンビーム(FIB)により10μm x10μmの十字を微細化し、〜50nm x 50nm以下の微細なBiナノ・ホール・プローブ素子が形成する;(6)最後に光露光技術を使って配線用金電極の蒸着及び形成を行なう。この工程により世界最小の50nmx50nmナノ・ホール素子の作製に成功し、SHPMで磁区の観察に成功した。研究目的を達成した。
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