研究概要 |
本研究では,ナノ界面構造制御した有機超薄膜を用いて,金属表面における多重表面プラズモン(SP)励起を利用して,有機層への光吸収を増大させることにより,従来の十倍程度の効率を有する光電変換素子の開発を目的に,その基礎的研究を行った。本研究で作製した光電変換素子は,プリズム/Al薄膜/有機色素薄膜/Ag薄膜の構造で,SP励起が可能な全反射減衰(ATR)法のクレッチマン配置構造となっている。有機色素薄膜としてp形半導体の性質を示す銅フタロシアニン(CuPc)分子の蒸着膜を使用した。すなわち,この素子構造はショットキーダイオードの構造である。なお,Al,CuPc,Ag薄膜の厚さをそれぞれ30nm,35nm,45nm程度とした。そして,ATR測定により,各層の複素誘電率と膜厚の評価を行った。また,ATR測定と同時に短絡光電流I_<SC>測定も行った。その結果,Ag薄膜/空気界面でSPが共鳴励起されたATR特性が観測され,このATR特性の共鳴角度に対応して,I_<SC>も増大していることがわかった。また,ATR測定から得られた各層の複素誘電率や膜厚を用いて,素子内部の電界分布や光吸収の計算を行った。その結果,SP励起により有機色素層内の光吸収が増大し,I_<SC>も増大することがわかった。次に,プリズム/Al(15nm)/有機色素薄膜(20nm)/有機薄膜(200nm)/Ag(50nm)構造の素子についてATR特性および光吸収特性の理論計算を行った。その結果,ATR特性において,低角度にAg/空気界画でのSP励起に伴う共鳴吸収と高角度に導波モードによる大きなディップが観測され,光吸収も増大していることが明らかとなった。今後,このような種々の構造制御した素子の作製を試み,短絡光電流などの測定を行い,多重SP励起や光電変換機能との関連を詳しく調べ,高効率光電変換素子の開発を行いたいと考えている。
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