研究課題
基盤研究(C)
本研究では微結晶シリコンの光キャリア輸送と局在準位特性を変調光電流法を用いて詳細に調査した。測定の結果、光キャリアのドリフト移動度が、結晶化率や結晶粒サイズおよび輸送方向に対して系統的に変化することが確認された。コプレーナ電極配置で観測された平行方向移動度は、結晶化率とともに単調に増加し、また結晶粒サイズが小さい場合には顕著な減少を示した。また、サンドイッチ構造で測定された垂直方向移動度は、平行方向のそれに比べ約1桁大きい値をもつことが明らかにされた。これらの観測結果は、キャリア輸送が結晶粒間の伝搬を介して起こり、結晶粒の空間的配置と幾何学的形状に非常に敏感であることを意味している。この物理的洞察をさらに深めるべく、輸送過程を定量表現する2つの基礎的モデルを新規に提案した。有効媒質モデルは、輸送機構に内包されているパーコレーション過程を積極的に考慮するものとして考案され、移動度がパーコレーションしきい値を境とし結晶化率とともに増加する現象を理論的に定式化した。この際、結晶粒界に存在するポテンシャル障壁と局在準位のサイズ効果を組み込むことで、実験結果に見られた移動度の結晶粒サイズ依存性を合理的に説明した。輸送特性の異方性は、異方的格子ランダムウォークモデルにより論理的に解釈され、結晶粒の形状異方性との物理的関連の基礎を確立した。一方、局在準位特性の評価に関しては、アモルファスシリコン材料での実験結果との詳細な比較を行い、数値計算と解析的手法に基づいて、両材料に含まれるダングリングボンド欠陥の物理的特性は極めて類似しており、荷電状態が中性状態よりも高いキャリア捕獲効率を有していることを証明した。
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Japanese Journal of Applied Physics 43・6A
ページ: 3297-3306
Japanese Journal of Applied Physics Vol.43, No.6A
Journal of Applied Physics 94・8
ページ: 5071-5082
Journal of Applied Physics Vol.94, No.8