研究概要 |
研究代表者の独創技術である電子線誘起反応微細加工プロセスのスループット向上を目指し、ステンシルマスクを用いた電子線一括投影露光について検討した。昨年度は、自己整合的に加工された上部白金電極を伴う400×400nm^2の孤立した強誘電体PZT薄膜キャパシタを得ることに成功し、当初の目標を達成した。 本年度は、より微細で密集したキャパシタを作製するためのマスク作りについて検討し、SiO_2メンブレムならびに白金との複合層に対するFIB加工を試みたが、残念ながら使用に耐え得るステンシルマスクを得ることはできず、将来に課題を残す形となった。一方、研究計画にも記したように、本プロセスの強誘電体フォトニック結晶作製への応用も試みた。目標としたのは、一辺800nmの正三角形の頂点に直径560nmの円形エアキャビティが数多く配置された(Pb, La)(Zr, Ti)O_3結晶である。これは、電気光学効果による1%の屈折率変化に伴い、入射された波長1.55μmの光の進行方向を40度以上変化させることのできる構造で、高速光スイッチとして期待されるものである。本プロセスでは、前駆体段階でパターニングした後、熱処理により残留有機を分解・除去し結晶化させるため、パターンが収縮する。そのため、目標としたようなナノサイズの構造を作製する場合は、その収縮を見越して描画パターンを設計する必要があることが見い出された。また、結晶厚みが200nmを超えると焼結時に側壁下部でダレが生じ、エアキャビティが埋まる傾向があることを明らかにした。以上の結果をもとに、最終的に、直径390nmの円に内接する六角形をピッチ800nmで配置したパターンを描画することで、焼結後に直径560nmの円形エアキャビティが整列した厚さ150nmの強誘電体PLZTフォトニック結晶を得ることに成功した。
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