研究概要 |
本研究では,超伝導体の混合状態における臨界電流密度(J_c)のピンニング・スケーリング則を明らかにする目的で,以下のような研究を行った.これらの解析では,ピンニングの強度分布が,量子化磁束の運動の決定に重要な働きをする.実験的解析では,このピンニングの強度分布を重イオン照射およびナノ構造人工ピンの導入により制御し,電界(E)-電流密度(J)特性の測定を行い,J_cの磁場依存性や印加磁場角度依存性を調べた.理論解析および計算機によるシミュレーションでは,ピンニングの強度が分布した場におけるピンニングから外れた量子化磁束のクラスタの浸透過程について調べた.その結果以下のような結果が得られた. 1.レーザアブレーション法により作製したREBCO(RE:Y,Er,Sm)超伝導薄膜やMgB_2超伝導薄膜に柱状欠陥や人工ピンを導入してE-J特性の測定を行い,J_cの温度・磁界依存性のピンニング・スケーリング則の測定を行った.また,E-J特性から,超伝導体中のピンニングの強度分布を見積もり,それらの温度・磁界依存性について調べた.特に低温領域と高温領域における磁界依存性から,熱遥動の効果について考察した.ナノ構造人工ピンを導入した薄膜やMgB_2薄膜についても同様にピンニングの強度分布を見積もった.その結果,ピンニングの強度分布を特徴付けるピンニングパラメータの磁場依存性に異常な振る舞いを発見した.この振る舞いが,磁束密度とピン密度に関係するマッチング効果であることを明らかた. 2.量子化磁束がピンニングから外れそのクラスタが浸透する過程をモデル化し,計算機シミュレーションを行った.量子化磁束を格子状に配置し,さらにピンニング力の強度が異なるものを空間的にランダムに分布させる.各量子化磁束をピン止め力強度に対応した確率でディピンニングさせ,この量子化磁束の移動による電界を見積もった.この際これからピン止め力の強度分布および空間分布に対するE-J特性の依存性を調べた.これらの結果は,実験とよい一致を示した.また,導出したE-J特性に基づき,磁化の緩和過程についてシミュレーションを行い,実験との比較検討を行った.
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