研究概要 |
大規模集積回路(VLSI)の基本材料であるシリコン系材料で発光素子が可能になればVLSIと共存可能な表示素子や光デバイスへの幅広い応用が期待できる。本研究では、シリコン・イオン注入したゲート酸化膜を持つMOS構造による可視発光素子(以下、シリコン・イオン注入型MOS発光素子)に関するものである。 イオン注入条件が電気的およびエレクトロルミネッセンス(EL)特性に与える影響を調べた。シリコン・イオン注入によって発光強度は50-70倍となり、C-V特性のヒステリシスも大きくなり、シリコン・イオン注入によってトラップ準位が生成されることが推定できる。ポリシリコンをゲート電極とした発光素子について、交流駆動によるEL発光特性を測定した。駆動周波数が大きく(100kHz)なると、発光強度は大きくなり、長波長成分が増加した。 短波長領域解析のための透明電極の形成短波長領域でのEL測定のため、Au薄膜透明電極を形成した。イオン・ビーム方式のスパッタリングにより、膜厚が薄くても低抵抗で高透過率の薄膜の形成が可能となり、厚さ15nm Au薄膜において、抵抗率が約3μΩcmで、波長300nm以上の透過率が約40%の電極が得られた。 上記の電極を用いて、短波長領域解析のためのシリコン・イオン注入型MOS発光素子をp型シリコン基板を用いて作製した。直流電圧を印加し、EL発光を確認した。Au透明電極を用いたことにより、従来のポリシリコン電極では困難であった、短波長領域の発光特性の観測が可能となり、青色の発光を確認した。いずれの条件でも、発光スペクトルは、ガウス分布を仮定してhν=1.2,1.6,1.9,2.4,2.8eVの5種類の中心波長に分離することができ、酸化膜中の発光中心と相関があると考えられ、発光機構モデルの提案を行った。
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