研究概要 |
アルミナセラミックの表面粗さと二次電子放出との関連についてSEMを使った試験を行った。表面粗さについては、市販のアルミナセラミックについて、(1)焼きっぱなし、(2)寸法合わせのためのポリッシング、(3)ラッピングも行い鏡面研磨、の3種類の表面粗度について測定を行っている。また、これまでアニール処理により二次電子放出が変わることが確認されているため、空気中での1400度のアニール処理を行った場合についても比較を行った。 表面粗度は、(1)-(3)についてそれぞれ、Ra=1.1,1.0,0.25μm程度である。焼きっぱなしの際に生成された深い窪みについてはポリッシングでは除去できないないために(1)と(2)の粗度の違いは小さいと考えられる。二次電子放出測定はこれまでと同様の走査型電子顕微鏡によるパルスビーム法を用いている。測定した結果、アニールを施した場合、純度の低い(アルミナ純度92%、95%)では、(3)の方が二次電子放出が低くなり、純度が高いセラミック(99.7%)では、表面粗度による違いは見られなかった。また、アニールを施さない場合は、測定結果にばらつきが大きく、またアニールを施した場合より二次電子放出が小さくなる傾向が見られた。 この結果から、二次電子放出係数自体については、定性的に表面粗度が粗いものが低くなるといった知見は得られなかった。しかし、実材料での絶縁試験の結果によれば表面粗度が粗いものが実用的な絶縁耐圧が高いことがわかっている。今回の試験は、電子ビームを垂直入射した結果であるが、今後は入射角度を変えたときの二次電子放出測定が、表面粗度に依存するかどうかについて測定を進めて行きたいと考えている。 また、マルチパルス法を使ってセラミックの純度と帯電のしやすさについて相関を調べた。純度が高いセラミックが帯電が小さくなる傾向を示した。ただし、単結晶アルミナであるサファイアでは高い帯電を示した。 市販の種々の材料についてレゾナントリングを使った大電力試験を進めた。その結果、純度が高いセラミックの方が耐性が高いことがわかった。これは、帯電が小さいセラミックの方が大電力特性に優れているということを意味しており、マルチパルス法での測定結果と矛盾しない。 ピンホールカメラについては、これを適用してレゾナントリングにおける放射線分布を測定することをもくろんでいたが、ピンホールの穴が小さくないと像が作れないのに対し、レゾナントリングからの放射線量がかなり低いレベルであり、検出器の積分時間(数秒程度)では、検出器の感知するノイズレベルに埋もれてしまい、像が得られなかった。
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