研究概要 |
本研究では,低損失なフィルタ性能を実現するために,その構成要素として有効な高Q共振器の一形式を提案した。昨年度までに、電磁界解析に基づく精密なフィルタ用共振器設計手法を確立した.さらに設計した共振器を用いた多段フィルタを試作し、60GHz帯において挿入損失1dB程度の狭帯域フィルタ特性を実現し、本フィルタの低損失性を実証した。本年度は,他の無線システム等との相互干渉を抑制するという要求に応えるべく,フィルタ回路構成法に工夫を加え,動作周波数以外の信号に対してほとんど無応答なフィルタ特性を実現した. 本研究で得られた成果は以下のようにまとめられる。 1)高Q値を有すると同時に,一部の不要共振モードの発生を抑制するのに適した共振器寸法が存在することを実証し,その具体的な寸法決定の手順を示し,汎用性の高い共振器設計チャートとして整理した. 2)2個の共振器が立体的に配置構成された結合共振器の共振器間結合係数の数値計算手法ならびに計算結果を示し,回路論的なフィルタ設計を行うための基礎資料を得た. 3)提案するフィルタ構造では,構成要素である共振器の高Q性が活かされ,従来方式のフィルタに比べ低損失性が数倍向上することを示した. 4)フィルタ回路構成法の工夫や,配列する共振器個数(フィルタ段数)の増加により,動作周波数以外の不要応答が,数十GHzの広帯域にわたって抑制可能となることを実証した.
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