研究課題
基盤研究(C)
ニューラルネットワークの自己組織化能力を担う重要な機能が可変シナプス結合である。しかし、多数のニューロンからなる大規模ニューラルネットワークにおいて、シナプス結合の強さ(シナプス荷重)を広い範囲で記憶するためにディジタルメモリーを用いると必要な記憶容量が著しく増加し、シナプス荷重を変化させるための演算システムは複雑となる。本研究では、以上の問題点を克服し高速に動作するチップ型のニューラルネットワークデバイスを創製するために、マイクロ磁気センサアレイを用いたシナプス構造と、パルス演算処理によるシナプス演算を組み合わせたデバイス構造を新たに創案し、その集積型シナプスデバイスの動作を実験:的に検証した。具体的には、コイルピックアップMI素子を拡張した、可変シナプス素子を新しく提案し、その素子のパルス電流対する演算特性を調べた。その結果として、積和演算処理を高速に実行できることを示した。すなわち、実用的な半導体回路を用いたニューラルネットワークの高速化につながる成果を得た。また、コイルピックアップ型のMI素子と半導体回路を組み合わせるパルスニューラルネットワークデバイスとして、磁気帰還形のニューロ回路を創案した。この構成による、パルス変調回路は、ΔΣ変調回路として働くことを理論的・実験的に示した。すなわち、アナログ演算処理を高精度のディジタル演算処理に変換できるパルスニューラルネットワーク構造であることを検証した。結論として、本研究で新たに提案・検証したパルスニューラルネットワークは、ニューロンの発火率だけでなく、ニューロ発火電位の時間相関を利用する高精度の信号処理に適応できる。すなわち、マイクロ磁気センサアレイを用いた自己組織型ニューラルネットワークは、CMOS集積回路を用いたパルス演算システムの信号処理機能を脳の高次機能に近づけるために有効なデバイス構造であることを示した。
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すべて 雑誌論文 (8件)
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