研究課題/領域番号 |
15560296
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
三好 旦六 神戸大学, 工学部, 教授 (20031114)
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研究分担者 |
土屋 英昭 神戸大学, 工学部, 助教授 (80252790)
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キーワード | ショット雑音 / モンテカルロ法 / 非平衡グリーン関数 / ナノスケールMOSFET / ダブルゲートMOSFET / 電流揺らぎ |
研究概要 |
本年度は、まず量子力学的枠組みの中でデバイスの電流雑音を解析するための基礎となる量子輸送モデルについて研究を行った。特に、ナノスケールMOS素子を念頭において、量子補正モンテカルロ法および非平衡グリーン関数法を現実的な半導体デバイスに適用可能な量子輸送モデルに発展させる研究を行った。 1.モンテカルロ法については、以下の4点について研究を行った。 (1)シリコン伝導帯の有効質量異方性(2重縮退、4重縮退)をシミュレーションに取り入れる。 (2)超粒子を用いる従来の簡易モンテカルロシミュレーションから、すべての電子の3次元運動を追跡するシミュレーションに変更する。 (3)ポアソン方程式との自己無撞着計算を行い、空間電荷効果が雑音に与える影響を考慮する。 (4)量子力学効果を量子補正ポテンシャルとして取り入れる新しい手法を開発する。 本年は、ナノスケールMOSFETについて、古典的なモンテカルロシミュレーションではあるが、ドレイン電流揺らぎと、雑音電力スペクトルの計算手法を確立した。ナノスケールMOSFETでは、チャネル内の電子数が少ないため、電流の揺らぎが電流平均値に比べて相対的に極めて大きくなること、雑音電力スペクトルの高周波部分にプラズマ振動の影響が現れ、しかも有効質量の異方性を反映して2つのピークが現れること、低温になるとスペクトルの上限が低周波に移動することなどを明らかにした。来年度は、量子力学的効果をモンテカルロ計算に取り入れる研究に取り組む。 2.非平衡グリーン関数法については、次の2点について研究を行った。 (1)有効質量近似の範囲で材料のバンド構造を反映させる。 (2)デバイスの2次元構造を取り扱えるモデルに発展させる。 ナノスケールMOSFETでは、電極の3次元電子は反転層に流入して2次元電子ガスとなり、反転層中をバリスティック伝導すると考えられる。従って、電子はソース・ドレイン間を全くランダムに伝わるのではなく、電子間に相関が強く働くと予想される。本年の2次元モデルでは、電子間の相関によるショット雑音の抑制効果を見ることができなかった。来年度は、電極の3次元電子が反転層に流入して2次元電子となる過程を適切にモデル化する研究に取り組む。
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