研究課題
前年度に引き続いて、量子力学的枠組みの中で電流雑音を解析するための基礎となる非平衡量子輸送モデルについて研究を行った。特に、MOS素子を念頭において、量子補正モンテカルロ法および非平衡グリーン関数法を多次元解析が可能な量子輸送モデルに発展させる研究を行い、ナノスケールMOS素子の電流揺らぎの評価を行った。1.量子補正を取り入れたモンテカルロ法(MC法)による電流雑音解析解析法としては、できるだけ現実に近いモデルとなるように、(1)シリコン伝導帯の回転楕円体・多谷バンド構造、(2)超粒子を用いない3次元MC計算、(3)ポアソン方程式との自己無撞着計算、(4)量子補正ポテンシャルによる量子効果を考慮したMC計算を取り入れたモデルを開発した。ナノスケールMOSデバイスを対象として、ドレイン電流揺らぎの時間変化、自己相関、雑音スペクトルについて、それらのゲート長依存性、デバイス幅依存性、温度依存性を解析し、ナノスケールにおける電流揺らぎの本質的な要因を明らかにする研究を行った。またバルク構造のMOS素子だけでなく、新構造のMOS素子である薄膜SOI-MOS素子やダブルゲートMOS素子についても電流雑音の観点から素子の評価を行った。MOSFETのチャネル長がナノスケールにまで微細化されると、チャネル内電子の高エネルギー化に伴い単位時間当たりの散乱確率が上昇し、ドレイン電流雑音が増大することが示され、MOS構造の微細化における雑音評価の重要性を明らかにした。2.非平衡グリーン関数法(NEG法)による電流雑音解析量子輸送モデルとしては、材料のバンド構造を反映させ、デバイスの2次元構造を取り入れるモデルについて研究を行った。デカナノスケールMOSFETのサイズは、量子効果デバイスのサイズに近付いており、さらに電極の3次元電子は、チャネルの反転層に注入されて2次元電子としてチャネル内を伝わるから、MOSFETの電子輸送は全くランダムに行われるのではなく、電子間に強く相関が強く働く。2次元NEG法により、バリスティック輸送におけるドレイン電流雑音シミュレーションを行ったが、Fanoファクターが1以下になるショット雑音の低減効果は現在のところ観測されていない。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
Int.Workshop on Computational Electronics (IWCE-10)
ページ: 93-94
Proceedings of SPIE, Noise in Devices and Circuits 5470
ページ: 28-36
Carbon2004
ページ: No.280
Int.Conf.on the Science and Application of Nanotubes
ページ: 13
2004 Int.Conf.on Simulation of Semicond.Processes and Devices (SISPAD2004)
ページ: Session 2.5
Mem.Grad.School Sci.&Technol., Kobe Univ. No.22-A
ページ: 103-114