研究課題
基盤研究(C)
光通信用フィルターデバイスやセンサーデバイス等に広く用いられているファイバーブラッググレーティング(FBG)は、紫外線レーザー光を光ファイバーに照射して作製され、通常、熱処理が施される。この熱処理過程においては、FBG特性の最も大切なパラメータ、すなわちFBG反射波長および反射光強度が変化する。この変化に対しては、FBG作製においては反射波長と反射強度を経験的に予めオフセットさせて作製されていた。本研究では、これらの変化挙動の原因を突き止め、さらにFBG形成の根源の欠陥生成を明確化させることを目標に研究を進め、次の3つの大きな成果を得ることができた。(1)水素ローディングを施した光ファイバにエキシマレーザー光を照射してFBGを形成しアニーリング工程での変化を追跡し、FBG反射波長の変化は、ローディングされた水素分子がアニーリングによる熱拡散で光ファイバーから抜け出て行くことによることを理論計算と詳細に比較して結論づけた。(2)長周期FBGにおいては、その中心波長と透過阻止量は、エキシマレーザー光照射後、時間経過とともに大きく、室温においては約2週間にわたって、変化することが知られている。この動的変化で、透過阻止量は深くなり、あたかも誘起屈折率が大きく成長し続けているように振舞う。この奇妙な現象は、予めローディングして置いた水素ガスH2が紫外線エキシマレーザー光照射で2つの水素原子Hに解離され、解離されたH原子はコアのGeと反応してGe-OH結合を形成し、屈折率変化を誘起する酸素欠陥となる。この過程で水素ガスは一部シリカガラスに取り込まれて消費され、残りの水素原子は再結合で水素分子に戻る。水素が消費されたコア部に向けて、その周りのクラッドから水素ガスが拡散現象で埋められる。水素ガスがコアで増えて行くこの過程で、誘起屈折率が見かけ上増えて、透過阻止量が深くなる。このことを我々は計算機シミュレーションを用いて定量的に証明した。(3)Erdogahの理論は短周期FBGによく用いられているが、減衰型フィルターに用いられる長周期FBGに対してはこれまで適用されていない。短周期FBGで透過光強度から反射光強度を求めるErdoganの手法において、減衰光強度に対応させる新しい手法を長周期FBGに適用するために考案して、この方法で実験データを解析して短周期FBGと比較した。その結果、屈折率上昇の根源となる励起準位から導電バンドへの励起の境界エネルギーは、短周期FBGと長周期FBGとでほぼ同一であることが証明できた。これらの3つの大きな成果のうち、(1)はJournal of Lightwave Technologyに論文掲載された。(2)はApplied OpticsへMay 18,2005に論文投稿した。(3)に関しては、現在、論文投稿準備中である。
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